■大津 尚史(ブランディング専門家)
地方の老舗企業の成長支援を手掛けるFBマネジメントは、「都市で働きながら地方の発展に貢献したい」というエキスパート人材に、顧客企業のプロジェクトに参画してもらう「スキルリターン」を展開している。そのエキスパートの一人、大津尚史は、誰もが名前を知っている外資系の大手食品企業に勤務。商品のブランディング活動の経験を積んだ上で独立した。今回は、地方企業のブランディングを支援する大津を取材。FBマネジメントとのコラボで、どのような成果を生み出そうとしているのか、語ってもらった。
地元でとても愛されている自動車教習所をはじめ、訪問看護リハビリステーション、フィットネスジムなどを運営している地方企業のブランド構築プロジェクトに携わっています。この企業のことを、運営施設ユーザーや取引先、施設の近隣住民など、様々なステークホルダーがどうイメージしているのかアンケートやヒアリングで調べる「ブランド調査」に着手したところです。
この会社は、自社がこの先も存続できるように「多柱化経営」を推進しています。これは、互いに全くシナジーを生まない、多様な事業を展開し、「どれか1つの事業が不況になっても、別の事業で利益を上げて、会社全体としての業績は維持する」という考え方。永続経営のためには非常に優れた施策ですが、一方で、「会社全体として何を目指しているのか分かりにくい」という弱点もあります。そこで、改めて自社の理念やビジョンを明確化するブランド構築プロジェクトを推進することになったのです。
調査では「イメージの差異」を浮き彫りにします。この会社が運営する自動車教習所では「受講者を褒めて、やる気を引き出すことで免許取得を導く」という指導スタイルが有名。そこで“褒める”を会社全体のブランドイメージのコアにするのが基本方針です。この“褒める”という自動車教習所のイメージが、ブランド・ターゲットにどの程度、認知されているのか、ブランドの信頼性にどのように影響を与えているかを分析し、ブランドのコア・バリューとして、全事業に「褒める」浸透させることを経営者の方と進めています。
また、“褒める”イメージをどのように訴求すればブランドとして浸透していくかを検討。最終的には企業ロゴや、「ジングル」と呼ばれる、企業のテーマ曲になるような短いメロディを制作します。視覚や聴覚など、ステークホルダーの五感に訴えて、ブランドイメージを浸透させていくのです。オーナー経営者の方からは、「形になるものができて、社内外に浸透させていくのが楽しみだ」と期待を掛けていただいています。
私は、大学卒業後、外資系の大手食品メーカーに就職しました。社名はもちろん、販売している商品名も、日本で非常に知られている会社です。入社後、営業部門に配属されたのですが、私はあえて売上があまり伸びていなかった、調味料の営業に力を入れました。「売れない商品を売った成果を見せつけて、花形部門であるマーケティング部へ異動したい」と考えたから。
その結果、営業として5年目を迎えた頃、私一人で調味料の国内売上の半分を稼いでいました。その実績が認められ、マーケティング部への異動が実現したのです。そこでは、日本での主力ブランドである飲料のプロダクトを担当。ブランド育成に携わりました。主な仕事は、プロダクトの5年先の売上・利益・マーケットシェアを拡大するための成長戦略を策定し、ブランド力を高めるためのプロモーションを進めること、特に、ブランドコンセプトを作成と、その世界観を消費者に伝えるため、広告をはじめとするクリエイティブの制作に力を入れました。この時に、ブランディングの基礎を身につけたのです。その後、複数回の転職を重ね、外資系企業で33年間、ブランディング・マーケティング・経営の仕事を経験した上で、コンサルタントとして独立したのです。
経営に携わってみて、「簡単にヒトを解雇する」といった外資系特有のドラスティックな人事に疑問を感じたことがきっかけでした。日本企業の経営の良い点に改めて気付かされたのです。そうした優れた経営をしている日本企業に、私が外資系で身につけたブランディングやマーケティング、経営の知見やノウハウを提供すれば、日本経済の発展に大きな貢献ができるはず。そう考えて、独立を決意したのです。
コンサルタントとしてスタートした後は、中小企業庁が推進している中小企業支援プロジェクト(ミラサポ・中小企業119)から仕事を受け、150社ほどの中小企業を支援。ブランディングをはじめ、経営、マーケティング、営業など、様々な分野でコンサルティングを提供しています。
FBマネジメントが成長支援サービスを提供している地方の老舗企業の経営者は、会社や商品のブランド価値への意識が高く、ブランディング・プロジェクトで経営課題を解決できる余地が大きいからです。老舗として地元に根付いてきただけに、ある程度、ブランド力はある。しかし、オーナー経営者の方は、新たな時代の流れに適合するようにブランドを一新したり、ブランド価値を全国や海外にまで広めていったりすることを考えている。そのため、私がお役に立てるようなプロジェクトが多いのです。
大きく2つあります。1つは、「ブランディングが必要だ」とオーナー経営者の方が既に認識しているところからスタートできること。それは、FBマネジメントが成長支援サービスを提供している中で、プロジェクトが発生するから。
例えば、M&Aの推進によって事業拡大を目指している中で、「コーポレートブランドを強化して、“こういう会社の仲間になって下さい”とM&Aの対象企業にアピールすれば、スムーズにいきますね」といった具合です。自分で案件を開拓する場合、ブランディングの必要性について、経営陣に納得していただくまで、時間と労力が掛かるケースが多いので、この点はありがたいですね。
2つ目は、オーナー経営者の信頼があること。というのも、FBマネジメントとオーナー経営者の間に深い信頼関係が構築されていて、私自身もFBマネジメントのチームの一員としてプロジェクトに参画するから。ただ「ブランディングのノウハウがある」というだけではなく、「自社に寄り添ってくれて、自社のことを深いところまで理解してくれる」と経営者が思ってくれなければ、外部の人間にブランディングを任せることはありません。
私自身が開拓した案件の場合、少なくとも半年くらいは経営者と対話し、信頼関係を構築する時間にあてています。FBマネジメントのスキルリターンならば、そうした信頼関係もできていて、プロジェクトを具体的にスタートさせるための素地が全て揃った状態になっているのが嬉しいですね。
今までの外資系企業でのブランディング経験を活かし、国内の老舗企業の継承と発展に貢献したいです。ブランディングということに馴染みのない経営者の方とお仕事をさせていただく機会もあると思いますので、一つひとつ丁寧にご説明してご理解いただくことが、専門家としての私の役割。FBマネジメントのブランディング以外の成長支援サービスとのシナジーを生みながら、地方企業の業績を伸ばしていきたいと思っています。
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