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【大山西町保育園 園長】オープンな運営をすることで「保育園の新しい価値」を示したい

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プロフィール

阿部 美和子(大山西町保育園 園長)

東京・板橋区にある「大山西町保育園」。区が運営する園として長年、地域に親しまれてきた。2020年4月から、埼玉県を中心に保育園や高齢者施設を手がける社会福祉法人・永寿荘が運営主体となり、新たなスタートを切る。園舎は無垢の木をふんだんに使い、子どもたちが素足で駆け回ることをイメージして建て替えられる。また、近隣で永寿荘が運営する「さいわい保育園」での勤務経験をもつ保育士さんたちが「大山西町保育園」へ異動し、これまでの園のよき伝統に、「永寿荘流」をくわえる予定だ。園長を務める阿部美和子に、保育業界の従来の常識にとらわれない、新しさに満ちた園づくりの詳細を聞いた。

地域に開かれたカフェを園舎に併設する

「大山西町保育園」は、もともと40年ほどの歴史を持つ板橋区立の園です。老朽化した施設のリニューアルに際して民営化されることが決まり、園舎の設計デザインから改築まで永寿荘が手がける前提で、運営を引き受けることになりました。同じ地域で永寿荘が運営している、「さいわい保育園」が人気園ということもあり、「あそこの園を手がけている法人ならいいな」と、地域のみなさんに期待をもっていただけているようです。

経験値の高い保育士さんたちが在職していることは公立の園の強み。子どもへの寄り添い方を、これまで在職してきた保育士さんたちから、しっかり学ばせてもらいたいと思っています。現在は週1回、「さいわい保育園」から派遣した永寿荘の保育士さんたちと、「大山西町保育園」に在職している保育士さんたちとで、合同保育をやっています。年末から新規スタートの2020年4月の直前までの期間は毎日、合同保育を行います。この期間で、よき伝統を受け継ぎ、また子どもたちと新しく赴任する保育士さんたちとの情緒のつながりをしっかりつくっていく予定です。

ベースとする保育はいままでと変わらないけれども、そこに“広がり”をつけていくことが永寿荘の役割だと認識しています。そのひとつが、園舎に地域の誰でも入れるカフェを併設すること。子育て中のお母さんたちがつどう場になることで、育児における孤独を解消したい、という想いがその背景にあります。いわば、現代版の“縁側”“井戸端”。お母さんたちのコミュニケーションの場となり、地域で子育て情報が共有されていくようにしたいのです。

また、誰でも来園できるようにすることは、保育士さんたちの職場文化の形成にも、好ましい影響があります。世の中的には「部外者に来られたらイヤだ」という保育園のほうが多いと思います。でも、外部の目にさらされていることは、開放的な職場文化の形成につながります。閉鎖的な環境で、同じメンバーどうしが四六時中、顔をあわせている状態では、硬直した人間関係が形成されてしまいがち。しかし、外部の目にさらされていれば、オープンな人間関係になり、風通しがよくなるものなのです。

学習教室を展開して保護者のニーズにこたえる

東京23区は待機児童が多いこともあり、いってしまえば「日本でいちばん、がんばらなくても運営していけるエリア」です。しかし私たちは、そうした状況に甘んじたくはない。「『あそこの保育園に入れたい!』と思われる園をめざす」という方針です。そのために、新しいことにどんどん挑戦していきます。ビジネスの世界にたとえるならば、ユニクロのような存在でしょうか。ファストファッションの常識を変える企業がひとつ出てきたことで、結果的にアパレル業界全体がよくなっていますよね。「大山西町保育園」は同じように、地域交流への取り組みをはじめとした、時代に先駆けた取り組みを行い、業界をひっぱる存在でありたいと考えています。

そのひとつが新しい園舎のデザイン。テーマは「やさしさ」。子どもにやさしく、保護者にやさしく、地域にやさしく、職員にやさしく。そんなコンセプトから無垢の木を使った木造園舎にしています。そこで、素足での保育をやっていくつもりです。

また、今後は園内で学習教室を展開するつもりです。保育園にいま、なにが求められているのか。これは保育の現場と保護者の方の間で、かなり認識にズレがあるように感じています。保護者のみなさんは「教育」を求めており、「やってくれたらありがたい」という思いがある。保育園が終わったあと、塾に行かせる例があるくらいですから。しかし保育者の側は、「子どもたちは自由に、遊びのなかで学んでほしい」というスタンスの人が少なくないんですよね。しかし、いまの時代は間違いなく、「いかに教育的な活動を、子どもの自主性とからめてやっていくか」というところにニーズがあると感じています。「大山西町保育園」はこのニーズにこたえる運営をしていきます。

世の中の変化が本当にめまぐるしく、子どもを取り巻く環境がものすごい勢いで変わっているので、数十年前の知識や経験では保育ができない時代。だから私たちは、時代に応じた展開をしていきます。「こんな新しい考え方・働き方で運営しているんだな」と思っていただけるような、“新しい価値を提示できる園”をつくっていきます。

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