西田 明子(おうぎの森保育園 副園長 兼 つつじが丘認定こども園 副園長)
「おうぎの森保育園」と「つつじが丘認定こども園」。埼玉県さいたま市・上尾市・川越市エリアで、子どもたちや保護者に人気の園だ。前者は社会福祉法人・永寿荘が、後者はそのグループ法人である学校法人永嶋学院が運営している。この2園で副園長を務めているのが西田明子。理系出身で以前はSEをしていたというキャリアの持ち主だ。自らの子どもを転勤のたびに転園させたことをきっかけに幼児教育にめざめ、保育の世界へ。そして、さまざまな園の長所を採り入れた園づくりに取り組み始めた。現在までの成果や今後にかける想いを西田に聞いた。
「ほめあう」を徹底し人間関係を良好にする
「保育園や幼稚園では女性どうしの派閥が生まれたり、人間関係のいさかいが起こったりしやすい」。保育士を志すみなさんはおそらく、いちどはそうした話を耳にしたことがあるのではないでしょうか。そうした状況となってしまう原因のひとつは、保育や教育の現場が“閉じた環境”になっていることがあげられます。毎日、女性保育士どうしのかかわりしかなく、古くからの園のルールや行事をずっと踏襲し続けている。私立で、その企業が運営する園がひとつしかなければ異動もできず、結果、辞めることになる――。
そうした例を反面教師に、私たちの園では意識的に“多様性”をもたせています。地域の方々や、世代・性別の異なる外部の方々とかかわれる機会が多くある点は大きな特徴です。永寿荘では高齢者向け施設も運営していて、園と施設が密接している。高齢者と接する機会が日常的にあります。また、介護職員が多数、在職しているため、永寿荘全体で見れば、職員の男女比はほぼ半々。たとえば同期入社の男性介護職員と一緒に研修を受ける機会もあります。そして、男性保育士さんを必ず各園にひとり以上採用しています。一般社会と近しい男女比にすることで、閉鎖的な「女性だけの職場」になることを回避しています。
「ほめあう姿勢」を大切にしているのも、特徴かもしれません。「ほめ育」研修を実施して、相手が喜ぶカタチでほめるという、かなり高度なスキルを身につけてもらっています。これは子ども向けのスキルですが、大人にも、つまりスタッフどうしにも応用可能。同じ言葉でも人によって喜ぶ人・喜ばない人がいます。ほめたいと思った理由をきちんと伝えないと、うれしいと感じられない人もいます。つまり、その人をふだんからよく見ていないと、ほめるのは難しいんですね。「どうやったら喜ぶのか」を知るには、その人の背景まで理解する必要があり、それをしようと思えば、必然的にコミュニケーションが生まれます。園を閉じた環境にせず、さらに職員どうしがお互いを知りあう機会を大切にしているからこそ、良好な人間関係ができていると自負しています。
おうぎの森保育園はチャレンジに積極的
「おうぎの森保育園」は、特別養護老人ホームと隣接しています。また事業所内には「おうぎの森第二保育園」があり、法人職員のお子さんを中心におあずかりしています。「おうぎの森保育園」でも月に数回、子どもたちとおじいちゃん・おばあちゃんたちとの交流機会をもうけています。「第二保育園」ではもう毎日のように気軽に交流しています。高齢者と子どもとの間で、お互いに気のあう相手ができることもしばしば。子どもにとって“推しメン”のおばあちゃんができたり(笑)。心あたたまる地域交流が当たり前にある園です。
行事やイベントを地域に開かれたカタチで行なっていることも特徴のひとつ。高齢者施設と園が合同で開催する「ありがとうフェスタ」や「ハロウィンパーティ」は地域全体を巻き込んで行なっていて、毎年700人〜1000人という方にご参加いただいています。
このハロウィンイベントでは毎年、入職2〜3年目の先生に担当してもらっています。永寿荘内の職員さんや地域の方とも連携が必要な役目で、最初は不安がる先生もいます。でも、最終的にはやりきってしまうんですよね。ひとりが悩んでいれば、全員で「どうしたらできるんだろう?」と考え、助け舟を出しあう風土もあるからでしょう。年長者として手を出したい瞬間もありますが、あえて一任して、影から見守るカタチを取っています。そうすることで、「新しいことをまかされ、チャレンジして、やりきった」という経験を積んでもらいたいからです。
最近では、自分で考えたユニークな仮装をして司会をしてくれていた先生の姿が印象的でした。「みんなを喜ばせるために自分になにができるか」を考えて行動していることが伝わってきて、「とても頼もしく成長しているな」と感じましたね。そうして先輩がチャレンジする姿を後輩たちが見て、「次は自分もやってみよう!」という思いがつながっていく好循環が生まれています。先生たちは毎日、子どもたちに「できないことはないよ!」と指導している立場ですし、「子どもたちが見ているから私もがんばろう!」という気持ちにもなれるのでしょう。「おうぎの森保育園」は、新しいことに取り組める、そんなプラス思考のムードがある園です。
つつじが丘認定こども園には“率先して動く文化”がある
「つつじが丘認定こども園」は地域の子育て支援センターを兼ねているので、子どもをもつ方なら誰でも園に遊びに来やすいのが特徴。「支援センターを通じて、この園を知った」という方が少なくないですね。
先生たちがテキパキしているのも特徴かもしれません。「総幼研教育」を採り入れているので、9時半から14時の間に遊びを含めたカリキュラムがギュッとつまっています。毎日ひとつずつやることが決まっていて、この「やることが決まっていること」は子どもにとって、すごく大事なんですね。気持ちが安定します。こうした教育の機会を通じて、「子どもたちが日々成長する姿を見たい!」という気持ちが強い先生が多い。子どもたちが飽きずに一日を楽しく過ごせるよう、前もって計画を立て、段取りよく動いている印象です。
また、職場の美化意識が高いのも「つつじ文化」といえるかもしれません。先生たちはいつも朝いちばんに、自主的に掃除をしてくれています。誰がどこを担当するなどとは決めていないのに、自分たちで気がついたところを掃除している。子どもたちが来る頃にはホコリひとつない状況にしていて、これはかなりすごいことだと思うんですよ。「気がついた人がやる」「いわれなくても動く」という文化ができているんです。新しい先生たちもこのような「つつじ文化」が好きで入ってくれる方ばかりなので、しっかり風土として根づいてきているように思います。
「世界に羽ばたく子どもたち」を育むために
大学や高校の教育要綱が大きく変わり、国際化が進むいま。私たちの園では「世界に羽ばたく子どもたちを育てたい」というビジョンを掲げています。言葉を選ばずに言うならばノーベル賞を獲ったり、オリンピックに出場したりするような、日本の代表として活躍できる子どもたちを育てたい。そのためのメソッドとして、それぞれ異なる教育方式も採り入れています。
まず、「おうぎの森保育園」では「ヨコミネ式」を。「自立」を最大の目標とし、ピアニカやさまざまな運動、自学自習などを行っています。ときには壁を乗り越えなくてはならない厳しい場面にでくわし、そのなかで、自分で考え判断し、行動するチカラをつけていく。そうしたことを目的としています。
またヨコミネ式は、「どう生き抜いていくか」という強い気持ちを身につけるための教育でもあります。現代は不登校児や引きこもりになる人が増えていますね。これは気持ちがめげてしまうのが原因。乳幼児期は、じつはどんなに怒られてもへっちゃらなんですね。この時期に怒られ慣れておけば、大人になってもたくましく生き抜いていけるんです。
「つつじが丘認定こども園」では、「総幼研」を採用しています。こちらは「知・情・体」がバランスよく育つよう、広い園庭でのびのびと活動し、遊びと教育をバランスよく採り入れながら、英語力も含めた能力を総合的に伸ばしていこう、という教育です。両園とも、大人になったときに「園でのあの経験があったから、大人になったときに活躍できる人間になれた」と思ってもらえるような教育機会を提供したいですね。
世の中の変化が激しい時代、これからの保育士にいちばん必要なものは「素直さ」かもしれません。旧来の考え方に固執して、「自分は絶対にこういう保育が正しいと思う」とかたくなになっていたら、それこそ“化石”になりかねない。とくにうちは「その時代にあった方法で、子どもたちを育てていきたい」という思いが強い。なにかあれば素直に受け入れ、変化に柔軟になれる方と一緒に働ければうれしいですね。まずは、やる気と素直さだけをもってきてください。あとはすべて私たちが教えるので、心配は無用です(笑)。まずは見学に来ていただければとおもいます。
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