徳間が初めて“それ”を見たのは飼料のサンプルが数多く並ぶ倉庫の一番奥、もっとも人目につきづらい場所にひっそりとあった。画期的な新商品を探していた徳間には閃くものがあった。
「なんて画期的な飼料なんだ。これを商品化したら絶対売れるぞ!」
妙な直感があった。徳間が倉庫の奥で見つけた“それ”の正体は活性型酵母と呼ばれるものだった。
その当時、飼料用酵母というものは、安価なビール酵母が一般的であった。機能的には今ひとつだが、牛の嗜好性が上がり、何よりも安い。だが、当然ビール酵母の酵母は死んでいる。
一方、徳間が見つけた活性型酵母は生きた酵母だ。休眠状態である活性型酵母は牛の体内に入ると、体温と唾液で生き返り、
消化器官内で呼吸をしながら消化器官内を嫌気性状態継続させ、生体の持っている細菌叢を安定させる。
違いは生きているか、死んでいるか。活性型酵母が、従来のビール酵母よりも機能面で優れているのは明らかだった。
しかし、商品化するためには価格面が問題となった。ビール酵母に比べて機能性は高いが、同時に価格も高くなってしまう活性型酵母が市場に受け入れられるかは全く未知数だった。
本当に売れるんだろうか。
活性化酵母を酪農家さんたちに届けたいという俺の思いはただのエゴではないだろうか…。
そんなとき、付き合いのある酪農家さんたちの顔が浮かんできた。少しでも牛のコンディションをよくするために日々苦心する酪農家さんたちにこの商品を届けたい。
徳間は活性化酵母を使った新商品を販売すべく、海外メーカーや飼料添加物製造会社との交渉を進めた。
しかし、苦労の末、販売開始直前までこぎつけた徳間を待ち受けていたのは、日本酪農史に残る悪夢、宮崎県での口蹄疫の流行だった…。
未曾有の伝染病である口蹄疫の影響で、各飼料会社の売上は激減した。
新商品を発表できるような状況ではない。検討できない時代となった。
当然、活性型酵母を配合した新商品の販売は中止となった。
悪いことは重なり、活性型酵母を作っている海外メーカーの日本担当者が同時期に退職することに。
徳間の夢は潰えたかに思えた。
しかし、徳間は不遇の時代も準備を怠っていなかった。
月日が経ち、酪農業界の状況が持ち直してくると、今度は高機能の商品が求められる様になった。
これまで温めていた活性型酵母がようやく日の目を見る瞬間だった。
そしてついに活性型酵母は“アクティサフ”という商品名で市場に出された。
世界最大の酵母・酵母エキス製造メーカーLesaffre社の活性型酵母です。
ルーメン内で目覚めた酵母が、ルーメン内の酸素を吸収することで、嫌気性に傾けます。繊維消化細菌、乳酸利用菌の活性を高めることで、プロピオン酸、酢酸が増え、乳量と乳脂肪のアップにつながります。
肉牛も同様に、VFAの産成効率を改善することが期待できます。
募集要項をご確認の上、ご応募ください。