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【ドライバー】安心と安全を徹底してお客さまに提供する。そのプライドが、最高の顧客サービス

スタッフを知るインタビュー
PROFILE

村上 武史(ドライバー)

バスやタクシーなど公共交通のインフラを担うドライバーの仕事は数多くある。そのひとつである観光バスの業界において、「安心・安全」への徹底したこだわりで信頼を集めるのが東京遊覧観光バス株式会社だ。公益社団法人日本バス協会の安全性評価認定制度で「3つ星」を獲得する同社の理念を実現すべく、ドライバーとして現場の第一線に立つ村上氏に、普段見えない仕事の裏側について聞いてみた。

万全の状態という絶対的な自信。それがあるからこそ、ためらいなくハンドルを握れるんです。

▼「安心・安全」を追求する東京遊覧観光バス。1人1車制を敷き、ドライバーとバスとの相性にまでこだわる

観光バスのドライバーになって10年。いま村上氏の前にあるバスは、3ヵ月前に新車に換えてもらった新しいパートナーだ。会社によっては、日によって乗るバスが変わる方式のところもあるというが、東京遊覧観光バスは1人1車の担当者制。お互いに気持ちを通わせながら、次第に自分とバスとの相性を築いていくという。

だから当然、自分の車への愛着は出てきますよ。いつもバスの状態は気になるし、キレイにすることもそう。前の車は5年くらい乗りましたが、クラッチのつながり加減など、自分なりの癖がバスについていて、もう体の一部みたいな感覚になります。

私たちは乗車前には、運行前点検としてタイヤや冷却水、マフラーやオイル、ウインカーやライトなど一つひとつを丁寧に確認します。そして運転席に乗ってみて、エンジンをかけてクラッチを踏んでみる。もしそこで「なにか」があったときには、すぐにわかります。タイヤの音やハンドルのぶれ方や、椅子に感じる振動ひとつでも、ふだんと異なる違和感がある。だからわれわれドライバーにとって、バスは五感で運転するものなんです。

計器類は目で見ますが、同時に音やにおいや振動など、体じゅうの感覚を研ぎ澄ませて異常がないかを事前に察知する。ときには経験からくる「第六感」も働かせながら。それは長いあいだ一緒に走り続けている、自分のバスだからこそ感じられる部分でしょうね。

▼自分の愛車は「体の一部みたいな感覚」と語る村上氏。バスの状態はいつも気になる。

▼ときには「第六感」も働かせ、体じゅうの感覚を研ぎ澄ませてバスに異常がないかを確認する

ふだんのルートが決まっている路線バスと違い、観光バスは行き先もまちまちで、距離や道路条件もさまざまだ。もちろん初めて行く観光地の場合もあり、運転には神経をつかう。だからこそドライバーにとって欠かせないのが、運行時の事前の「予習」である。

運行スケジュールが出されるのが3~4日前ですから、初めて行く場所の際には特に、そこからもっとも安全で効率良く走れる走路について細かな調査を行います。また行ったことのある場所であっても、工事で通行不能な場所や、道路状況が変わっていたり、天候の悪いケースもあります。それらの要素を十分に把握したうえで、運行当日を迎えます。どれだけ予習をして、頭の中でイメージをしたうえで現場に向かうかによって、仮にトラブルが起きても対処する術は全然違ってくるものです。

気持ちに余裕がなければ、運転していても焦ってしまうんですよ。たとえば道を間違うとお客さまにも伝わるもので、「この運転手、間違ったんじゃない…?」って、お客さま同士でささやく声が聞こえてくる(笑)。慌てて方向変換しようとして、事故につながることだってあります。予習していれば、4のトラブルが2や1にできるのに、それがないと5や6に拡大してしまうんです。

大切なのは、運行前に順路についてのイメージを頭の中につくっておくこと。また運転中にも、私たち乗客が知らない中で、ドライバーは不測の事態を防ぐためのさまざまな「備え」を行っているという。

運転しながら、目的地に向かうまでの、現場の生の声を聴いていくことも大切です。途中のパーキングに寄ったときに、お客さまはトイレや買い物に行きますね。そこでドライバーは、行き先に電話をかけて周辺の道路状況を聞いたり、パーキングでは地元のナンバーのバスを探して、その運転手から地元の人しか知らないような道路情報を得るよう努めます。

突発的な事故や、地元のイベントなどで道路が混んでしまっても、地元の運転手だけが知っている抜け道ってあるんです。それを聞いて、自分がもっている地図に書き込んでいきます。中には自分の地図がマーカーだらけで真っ赤になっている人も。それは、自分の目と耳と足で集めた情報の宝庫なんですよ。

だから私は、ナビは一切使いません。自分で地図を見て、それを頭の中でイメージして走らなければ道を覚えないし、アクシデントにも自分で対処できないんです。ナビに頼るんじゃなくて、自分で調べて、自分の頭にしっかりと入れていく。その自信を備えたうえで運行にのぞむことが、乗っているお客さまに安心感を与えることにつながると思います。

実は観光バスのドライバーは、初めて行く土地ってけっこうあるんですよ。でもお客さまにそう感じさせないよう運転することが、私たちのプライドのひとつかもしれませんね。

▼安全な走路調査など事前の備えは決して怠らない

観光バスに乗って10年になる村上氏の、ドライバー歴のスタートはトラックだった。同じ運転業ということで、それほど意識せずにトラックから観光バスに乗り換えたものの、その「違い」を最初から如実に感じさせられたという。

お客さまを下ろして、バスを降りて家に帰るじゃないですか。そしたら、「疲れ方が全然違う」って最初に感じたんですよ。それまでのトラックに乗っていた後とは、帰宅してからの体の重さがまったく違うというか…。知らないところで気を張ったり、緊張しているんだとよくわかりました。やっぱり貨物や荷物を運ぶのと、人を乗せるのでは全然違う。そのプレッシャーを感じていることが自分でわかったんです。

バスを日々運転しながら、想いの底には「お客さまの命を預かっている」という使命感は絶対にあります。でも、それをいつも意識の前面にもってきたのでは、重圧に押しつぶされて運転どころではなくなってしまう。それよりも、お客さまを乗せる前に、十分な点検や自己管理をして万全の状態でのぞんでいることの絶対的な自信―。命を預かっているというプレッシャーよりも、その自信のほうがつねに打ち勝っている状態だから、運転できるんです。

逆に体調面などが万全の状態でないときには、不安な想いが頭をもたげ、「お客さまの命を預かっている」という想いが大きな重圧となって出てきます。それでハンドルをもつことにためらいが生じるようなときは、もう運転席に座ってはいけないんですよ。

裏返せば、そうならないように、自己管理や道路調査などの事前準備を徹底して、つねに自分なりの万全の状態をつくっていくことが不可欠。その自信があるからこそ、使命感は良い意味で無意識のうちに追いやることができるんです。

▼今日も明日も明後日も、つねに同じ状態で、当たり前のことをやり続ける。村上氏はそのことにプライドを持つ。

今日も村上氏は、走る前には自分のバスの状態を丁寧に見極め、目的地までの道路のイメージを頭に叩き込むルーティンワークを黙々と重ねている。そこには、決して目立たないが、絶対にブレることのない、変わらない想いが土台としてある。

今日も明日も明後日も、同じような状態で仕事をしていくこと。つねに同じ状態で、当たり前のことを普通に、当たり前のようにやり続ける。今日のお客さまにはできたけど、明日のお客さまにはできない、ということのないように。何事もなくお客さまを送り届け、無事に帰ってもらえるよう貫くことに尽きると考えています。

確かに接客に長けた、話芸でお客さまを喜ばせるドライバーは受けるかもしれませんね。でも私は、運転手の最高の顧客サービスは、安心と安全を徹底してお客さまに提供する、そこにプライドをもつことだと思っているんです。

もちろん、お客さまと話もするし、コミュケーションをうまく取る中で楽しんでもらえるようベストを尽くしますよ。話術はちょっと苦手だけど(笑)、でもお客さまに喜んでもらえるなら、なんとかがんばりたいかな。

われわれドライバーにとって、バスは五感で運転するものなんです。

村上 武史(むらかみ たけし)プロフィール

トラックドライバーとして経験を積んだ後、10年前に東京遊覧観光バス株式会社に入社し、観光バスの乗務員としてのキャリアをスタートさせる。現在、14名いるドライバーの中では最年少の存在である一方で、確かなキャリアにもとづいた乗務スキルには定評があり、社内外からの高い信頼を集めている。

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