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【役員インタビュー】
大企業社長からインド発ベンチャーへ。世界基準のITで日本変革に挑む

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プロフィール

■川﨑 純平(CMO)

全国に店舗展開する上場企業で、学生アルバイトからスタート。経理や総務担当、IT、物流、ECの責任者などを歴任した後、37歳で社長に就任した川﨑純平。退任後、次に彼が選んだ会社は、インド人エンジニアが日本で立ち上げたITベンチャー・VeBuInだった。今回は、同社のITプロダクトの特徴や、会社の営業やマーケティングに携わることの魅力などについて、語ってもらった。

「元社長」が通じない領域で戦いたかった

──最初に、川﨑さんがVeBuInにジョインするまでのキャリア・ヒストリーを聞かせて下さい。

私の前職は、ジーンズショップです。就職当時はアメカジブームによって大変勢いがある業種で、私も単純に「ジーンズショップで働いてみたい」と考えていました。その中でも、急成長している会社であれば、チャンスも多く回ってくるだろうと考え会社を選び、アルバイトから入社しました。大学卒業後に正社員になり、1年後には店長を経験することができました。それから、本社の経理や総務などを担当した後、IT・業務改革の責任者になりました。その後も物流、ECなど責任者を経験した後、37歳で社長に就任いたしました。
 
転機になったのは、コロナ禍であったと思います。世界的に、今まで当たり前だったことが、当たり前でなくなるというのはショックなことでした。原宿や渋谷、新宿、池袋、銀座など、いつも人で溢れている街がゴーストタウンとなっていました。
 
このような経験をしたこともそうですし、20~30代までで小売業におけるキャリアはアルバイト~社長まで一巡できたこともあり、社会貢献を第一義に考えて仕事がしたいと考えました。また、自分の成長のためには、 “元社長”という肩書が通用しないフィールドで勝負したい」とも考えました。
 
結果として、「IT」というテーマが、今後の日本にとって注力すべき課題だと考えました。その中でも、インドのITという果てしない可能性を秘めたVeBuInは知己でもあり、働かせてもらえるように私からお願いしたものです。さらには、インドの人を権威・権力によって統制することは困難であり、真の自分の力が試される場所ともなりました。

──30代で東証一部上場企業の社長という経歴があれば、一般的には小売業の役員として転職する道もあったのではないかと思います。あえて、ベンチャー企業であるVeBuInにジョインしたのは、どのような可能性を感じたのでしょうか。

バビックさん、ラジェンドラさんは、私がIT責任者をしていたときのパートナー企業の責任者であり、15年来の知己です。その人柄や行動力、どのような思いで会社を設立したのかについて、良く知っていました。私自身が、様々な選択肢からベストパートナーだと感じていた彼らですから、入社前から不安はなく、成功の確信をもっていました。単純に日本でビジネスをすることについての苦労はあると想像していましたが、その点を私が補完することができれば良いと考えました。
 
日本の多くの企業の経営者にとって、ITというのは外来種で、必要・重要だと思っているものの、実態が良く分かっていない。そして、毎年生まれる新たなバズワードにうんざりしています。ITの実行者は、大学でITを学んできた人は少なく、多くは経験則で自分なりに対処しており、やはり悩む人が少なくありません。
 
初期的な解決策としては、ITの価値をもっとも理解していて、基本知識も充実した人と一緒に取り組むのが最適だと考えています。ITの領域においては、多くの海外製品が日本でも大きなシェアを占めている一方、日本の製品が海外展開しているという事例がないことも、競争力の低さを物語っています。この課題に対して、いきなり成功できるとは思っていませんが、とにかく向き合っていきたいと考えているのです。

「承認」の負担を軽減するプロダクト

──ずっと1つの企業の業績向上に携わってきた川﨑さんが、ITプロダクトを広く販売していくことで「日本経済全体の生産性向上」という、より大きな目標にチャレンジすることになったのですね。では、VeBuInの自社開発プロダクトで目指すことや、事例などシェアして下さい。

私も、大企業で仕事をしていたこともあり、毎日膨大な承認業務に忙殺されていました。1つ1つ大切な内容なのだからしっかり目を通して確認したいという思いと、それをやり過ぎると業務が回らなくなり、形式的に実行せざるを得ない、というジレンマに陥っていました。
 
紐解いてみると、おそらく日本企業は書類などの形式よりも、話を通す、意思を共有するなどの実質を重んじてきたのだと思います。そして、人間同士のやり取りで、一定の融通を聞かせたり、便宜を図ったりしていたのではないでしょうか。しかし、グローバル社会において、内部統制の体制構築への要請があり、ルールに沿わない行為が悪とみなされ、エビデンスをしっかり残すなどの形式面が要請されるようになりました。
 
グローバル化の流れに基づくもので、議論としては正しいと思うのですが、これまでの日本企業の体質とは、必ずしも合致しないものです。そして、形式に振り回されてしまい、「目的に沿って、どのような状況判断と行動を行うべきか」よりも、「ルールに則しているかどうか」が優先課題になってしまいがちです。承認者(会社の上層部)がこのようなマインドに陥ってしまった場合、企業全体が停滞してしまうでしょう。
 
『SmartFlow』では、可能な限り承認者のサポートおよび、社内手続きにまつわる様々なプロセスの自動化を目指したいと考えています。具体的には、稟議、申請、報告、届出、立替経費精算、旅費・交通費精算、取引開始申請~請求書の支払依頼~会計処理~支払実行などの様々な手続きをサポートする仕組みです。
 
SmartFlowの強みは2つあります。
 
1つは私自身の実務経験や外部のアドバイザーの知識、そして何より実際に利用されているお客様の声によって、実務に則した機能を提供しようとしていることです。世の中のITプロダクトの多くは、汎用化を重視するがあまり、1つ1つの業務への専門性が弱くなっていると考えています。法令要件も多いこれらの業務をしっかりとサポートすることを考えています。
 
もう1つは、インドのシステムエンジニアによる技術力です。最近ではAIが「未来的な技術」から「欠かせない技術」へ転換を遂げつつありますが、こうした有効な技術をどんどん取り入れることが可能です。
 
例えば、立替経費精算のプロセスでは、
①    スマホアプリでレシートを撮影
②    AIが必要なデータを読み取り、自動入力
③    AIが読み取った明細や取引先情報を元に、自動仕訳(勘定科目を付与)
④    適格請求事業者NOが正しいか、国税庁の情報と自動照合
⑤    AIが、読み取ったレシートが使いまわしされたものでないかを自動チェック
⑥    正確な情報は、事前設定された承認経路に沿って、回覧が実行される
⑦    通知はいつも使うTEAMSやLINEWORKSで行われ、通知の中で書類の内容確認と承認実行まで行える
⑧    経理担当者は、正確に上がってきた情報を、最終チェックし確定すると、自動的に会計システムに連携される
⑨    電子帳簿保存法に対応しており、原本のレシートの回覧や保管は一切不要
 
というように、業務に対する深い理解に対して先端技術を織り交ぜることで、ダイナミックな自動化や、パワフルなサポートが可能になってきます。他社との競争もありますが、持ち前の開発力を活かして、短期間で競合比較で負けないプロダクトにします。
 
また、プロダクトに認知度があるわけではないのですが、最近では、様々なグループウェア、ワークフロー、経費精算サービスを検討しているお客様より、それぞれのカテゴリのリーダー製品と比較しても機能が充実しており、価格が圧倒的に安い、と良い評価を頂けるようになりました。
 
かつ、製品の完成度はこれからまだまだ上げていけると考えているのです。
NO1になるまでの道のりは、そう遠くはありません。

──では、そのプロダクトをどのように販売していこうと考えていますか。

私は小売業出身ですが、小売業においてはお客様のニーズを踏まえずに、権威的な力(人気である、ブランドである)を使ったり、過剰なセールイベントで刺激したり、相手を帰らせない話術を用いたりして販売するいわゆる「ゴリ押し営業」は、既に時代遅れになっています。生産者と消費者は対等な目線で、ともに価値を生み出し、発信していくのが基本的な流れです。
 
小売業では、そうは言っても既につくってしまったものを販売できなければ在庫が残ってしまうために、何とかしなければなりません。一方、SaaSのITプロダクトにおいては、顧客のニーズに対して、いくらでも機能を追加したり、修正することが可能です。この前提をふまえて、私たちはお客様に寄り添った販売活動を実行すべきだと考えています。

「お客様に寄り添う姿勢」をもった人が活躍しています

──では、そうしたVeBuInのプロダクトの営業やマーケティングで活躍できるのは、どのような人材なのか教えて下さい。

これから、私たちのMarketing&Sales部を検討される方は、従来的な「営業」のイメージと大きく異なると理解してください。求められる行動は、お客様とコミュニケーションを図り、お客様の実務をいかに改善できるかを一緒に考えていくこと、そして、お客様の声を開発者に伝え、より良いプロダクトにブラッシュアップしていくことです。
 
そのような中、私たちは「お客様に寄り添う」気持ちをもった人材を求めています。
 
私たちのMarketing&Salesのチームメンバーには、IT業界の経験者がいません。営業の経験者もいません。ノルマも課していません。強制力も働かせていません。しかし、不思議なもので、このチームからは今までのBtoB営業の常識を覆すような、自発的かつ積極的なアイディアと行動が生まれだしています。
 
また、「営業が足で稼ぐ」時代ではありません。デジタルマーケティングによって、効率的・効果的な情報発信を進めていきたいと考えています。そして、お客様に寄り添ったサービス体制を実現するために、PR/営業/カスタマーサクセス/カスタマーサポートのすべての領域において、「内製」を行っています。IT/デジタル技術が得意な会社であり、内製化は容易なのですが、経験を重ねて社内ノウハウの確立と向上を図っているところです。

──良く分かりました。最後に、今後のプロダクト事業の成長戦略を教えて下さい。

『SmartFlow』は、業界では最後発と不利な立場にありますが、一挙にワークフローや経費精算のカテゴリのNO1を目指していきます。サポートする業務領域への専門性×技術力で、既存のプロダクトの範囲をカバーするとともに、競合にない機能もどんどんリリースしていきます。
 
そして、2024年中にはSmartFlowに販売を確実に軌道に乗せるとともに、新たなプロダクトの企画もスタートさせたいと考えています。開発体制に不安がない分、企画する時間は非常に楽しみですね。

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