■パルマル ラジェンドラ(COO)
VeBuInは、インドのシステムエンジニアが、茨城県つくば市に立ち上げたITベンチャーだ。そして、彼らは資金力豊富で、無数の選択肢を持つグローバル企業や上場企業から選ばれている。今回は、同社の共同創業者でありCOOを務めているパルマル ラジェンドラを取材。VeBuInのITサービスが、なぜ日本の大企業から選ばれているのか、解説してもらった。
オフショアでも下請けでもない「パートナー」
インドでシステムエンジニアは、医者や弁護士と同じくらい尊敬されている職種です。私も「エンジニアになろう!」と、インドの大学でITを学びました。卒業後は、インド第2の大都市・ムンバイのIT企業に就職しましたが、就職先は日本企業との取引が多い会社を選びました。私の小さいころ、車や家電など先端的な商品は、日本製品がリードしており、日本は憧れの国でした。そして、日本語の勉強を開始していたこともあり、ぜひ日本で仕事をしたかったのです。
その後、勤務先から日本へ派遣され、バビックと同じ会社に常駐し仕事を開始しました。当時の多くのインドのシステムエンジニアは「オフショア」や「下請」で開発を行っていました。誰かがまとめた設計書を元にして、開発作業を実行するのみです。一方、私は日本で直接、お客様の担当者とコミュニケーションしながらシステム開発を行ってきました。この経験は非常に大きかったです。ITは目的ではなく、手段。顧客が何を求めているかを知ることがスタートであるということを経験して学ぶことができました。
私やバビックは、大きな実績ができたために、有利なオファーが無数にあり、かんたんに2~3倍の給与を受け取れる選択肢がありました。しかし、2人とも目先のお金よりも、もっと大切なことに向かっていき、もっと大きな成功を実現したいと考え、VeBuInを設立することにしたのです。
インド経済は、急激に成長しています。給与も毎年120%~150%増加するのが当たり前であり、親の時代からすると考えられないぐらいのお金を手にすることができます。しかし、親の時代は不幸で私の時代が幸福だとは思わないのです。家族や友人が集まり、ご飯を食べたり話をしていれば、とても幸せです。お金をもてば、生活をもっと便利にできますが、幸せの水準が上がったわけではないと感じています。
であれば、目先の自分の給与アップよりも、大きな目的・目標に向かって行動を開始すべきだと考えたのです。そして、オフショア・下請というマインドセットを離れて、お客様と一体になってソリューションを生み出すという成功事例を生み出したいと考えました。
この考え方では、新たな顧客とパートナーの関係を築くことができれば、そのたびに私たちの可能性は広がっていき、より大きな社会貢献を実現することができます。目指す成功の大きさとして、比較するまでもないでしょう。せっかく日本に来たのだから、大きなチャレンジをしなければ、後悔すると思いました。
システム開発において求められるスキル/知識は4つあります。
一つ目は、「技術力」です。新しい技術は、お客様に向けて新たな提案を可能にする力をもっています。この点は、日本のシステムエンジニアよりインドのシステムエンジニアは優位であると考えています。理由としては、インドのシステムエンジニアは全員が大学でITの理論を学んできている点にあります。理論をベースとしているために、新たな技術や新たな製品に対して2~4週間という短期間でのキャッチアップが可能です。日本のシステムエンジニアは、会社に入ってから、製品レベルで理解をしているために、新しい技術を学ぶことに苦労してしまうようです。
二つ目は、「プロジェクト実行力」です。私たちのプロジェクトにおいては、数カ月~数年もの期間、数人~数十人の開発者が強力して、開発を実行します。ムリ・ムダを発生させず、高いレベルのQDC(品質・納期・コスト)を実現する実行力が求められます。
この点については、ガートナー社が提唱する「デザイン思考~リーンスタートアップ~スクラム開発」というアプローチを私たちは採用しており、実践経験と世界的に推奨されている理論を組み合わせて、私たちのノウハウ確立に努めています。
プロジェクト実行力についても、私たちには優位性があります。日本企業は、技術者を揃えることが困難であり、多重下請構造によりプロジェクトを実行するケースが多いと聞いています。これでは、どうしてもチームが一体になれず、スピードも遅くなりますし、コストも高くなります。私たちは、質・量ともに充実したシステムエンジニアの力によって、「ワンストップソリューション」を提供できるために、他の日本企業よりも安く、速く、良いソリューションを実現することが可能です。
3つ目は、「語学力」です。当然ながら、お客様と会話するために必要です。日本の国境は、日本語であるという話を聞きました。日本人は日本語から離れられず、出国するのが難しくなる。外国人は、日本語を習得することが難しく、入国するのが難しくなる。
この「日本語の壁」は、多くのインドのシステムエンジニアにとっては、十分に乗り越えることが可能です。私たちは既に、出身地域の言葉、全国のヒンドゥー語、世界で働くための英語、そしていくつものプログラミング言語を習得してきており、新たな言語を習得することには比較的慣れています。体系が異なるために、最初は苦労しますが、1~3年の学習を継続していけば、日常会話・ビジネス会話ともに問題なく実行することができるようになります。私たちは、日本語教室を内製しており、日本にいるすべてのシステムエンジニアに向けた日本語教育を進めています。
4つ目は、お客様のビジネスに対する基本理解です。これがないと、お客様との会話がスムーズに実行できません。幸いにも、日本のお客様の多くは、私たちに対して親切・丁寧に業務を教えてくれて、事前の理解を求められることはありませんでした。しかし、そのような親切なお客様に甘えることなく、積極的にビジネスの基本知識を身に着けていきたいと考えています。この点は際限ありませんので、私たちが経験豊富な小売業などから、教育の仕組みを整えていきたいと考えています。
競合他社の4倍以上のコストパフォーマンスを実現
ソリューション事業は、お客様に向けてオーダーメイドのソリューションを提供していく事業です。別の選択肢としては、パッケージソフトを活用する方法が存在します。
パッケージソフトのメリットは、既に出来上がっているために安く手に入れられるということです。コストのことだけ意識すれば、確かにパッケージソフトを活用するのが良いと映ります。一方で、パッケージソフトが自社の業務にフィットするとは限りません。もしギャップが大きければ、改修するか、我慢して使うかの2つを選ぶ形になるでしょう。
しかし、多くの場合、パッケージソフトを改修しようとすると改修コストが膨大になってきます。改修のボリュームによっては、オーダーメイドでつくったほうがコストは抑えられることが少なくありません。逆に、改修せずに我慢して使うのであれば、本来目指していた効果が得られないかもしれません。
オーダーメイドのソリューションを求めるお客様は、大きく2つに分かれます。一つ目は、業務の独自性が高いケースです。この場合は、パッケージソフトを活用すると、業務とのギャップがどうしても大きくなります。そして、もう1つは会社の規模が大きくなったために、自社の組織構造や業務フローにフィットした仕組みをつくりたいというケースです。取り扱う業務量が大きいために、システム化により得られる効果が大きくなるということですね。
以上のことから、ソリューション事業においては、主な顧客は大企業であり、開発するシステムとしては、「基幹システム」や「ECシステム」、または基幹システムやECシステムを補完するシステムなど、費用対効果を強く感じられるシステムが中心になっています。
これらのプロジェクトの実行において、あるお客様からは「これまで委託していた会社よりコストパフォーマンスは4倍以上」という評価をいただいています。半分の期間、半分のコストで同じパフォーマンスが出せる、というようなご評価です。
とある会社からは、「従来に比べて開発費は10分の1、保守運用費は60%だが、ただの保守ではなく積極的な改善もしてもらえる」という言葉もいただきました。
とあるプロジェクトでは、「ブラックボックスになっているシステムで、そもそも引き受けてくれる会社が無かった。リプレースしてくれて、本当に助かる」という言葉をいただきました。
「技術力」「プロジェクト実行力」「日本語レベル」「業務理解」の4つのポイントについては、まだまだ成長の余白があります。パッケージソフトを入れてみたものの、思っていた効果が生まれずに困っているお客様は多くいらっしゃいますので、私たちはさらにレベルアップし、大企業のお客様に限らず、より多くのお客様のご支援ができるようにしていきたいと考えています。
「共感力」の高い人材が活躍中
何よりも、「共感力の高い人」こそが成功する会社です。
プロジェクトの実行期間ではお客様と私たちのプロジェクトチーム合わせて数十人もの人が関わり、利用するユーザー数では数十名~数万人規模のものまであります。このように多くの人が関わる中で、「全員の気持ちを1つにする=OneTeamになる」ことで、真のプロジェクト実行力が生まれると考えています。OneTeamの力は、個々の知識やスキル、語学力の不足などを埋める力であり、そこで働く人にもっとも求められるのは「共感力」なのです。
日本のお客様は私たちに対して、「技術力」「プロジェクト実行力」は当然あると期待するものの、「日本語」「業務理解」の点で心配すると考えています。この4軸を乗り越えたプロジェクトでは、既にグローバル企業・上場企業から選ばれていて、競合他社と比較しても既に優位に立っています。この4つのポイントについて、会社として育成する仕組みを持つことが、もっとも大きな成長戦略の重要課題となります。
また、システム投資はスポット・少額の取引ではなく、継続・高額の取引となり、信頼されること(=ブランド力を磨くこと)が顧客の拡大に向けて必要です。1つ1つのプロジェクトを大切にし、顧客との信頼を積み重ねていき、その価値をブランド化して発信していきたいと考えています。
私たちの成長の可能性は無限です。
今の会社の規模のみを見れば、「上場」なども大きなゴールに見えるかもしれませんが、私たちはそれすら通過点として捉え、もっと大きな成長を目指していきたいと考えています。
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