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 【TOPインタビュー】
インド×日本×IT×ベンチャー。ワクワクする無限の可能性に賭けた

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プロフィール

■シャー バビック(代表取締役社長)

IT産業の隆盛をテコに、経済が急成長しているインド。優れたエンジニアを多数、輩出しており、中には来日して日本企業のDXに貢献しているエンジニアも少なくない。茨城県つくば市にオフィスがあるITベンチャー、VeBuIn代表のシャー バビックも、そうした“インド出身のエンジニア”の一人。日本のビジネスへの理解を深める中、「インドの技術力と日本の丁寧なサービス力を融合させたIT事業」の可能性に着目し、日本で起業した。そこで今回は、バビックを取材。「インド×日本×IT×ベンチャー」に、どのような可能性を見たのか、語ってもらった。

インドの若手エンジニアは日本への関心が高い

──バビックさんの母国・インドはIT大国として世界から注目されていますね。始めに、その背景を教えて下さい。

インドは、ご存じのとおり多民族・多言語・多宗教の国で、カースト制度という身分社会も存在しており、独立前はそれらの違いに目を付けた「分割統治」が行われていました。1947年の独立後も、多くの紛争が起きながらも、「1つのインド」を目指してきました。リーダーであるガンディやネールといった人の存在については、歴史の授業で知っている人が多いかもしれません。
 
その後のターニングポイントとして大きなものは1960年代の「緑の革命」で、農業のノウハウを確立し、「食べるものに困らない」環境ができました。
 
経済自由化の政策がとられたのは、1991年で比較的最近のことです。その頃はまだまだ貧しい国でしたが、「英語を使える人が多い」という点と「人件費の安さ」から、欧米のITの仕事を多く請け負うことになり、それが経済成長の大きな要因となりました。
 
カースト制度は、制度としては廃止されていたものの、各地域の文化として残っている部分もありました。カースト制度においては、自分の生まれにより職業まで決まってしまうのですが、システムエンジニアという仕事はカーストに定められていない仕事です。カーストを乗り越えることができ、さらに豊かになれるということから、人気の職業となりました。
 
元々、教育を大切にしている国ですが、IT分野では特に「産・学・官」連携で総力を挙げてシステムエンジニアの育成に注力することで、現在では米国に次いで世界第2位、343.1万人のITエンジニアを擁するまでになりました(ヒューマンリソシア株式会社『2023年版:データで見る世界のITエンジニアレポートvol.9』)。
 
実際には、私のように世界で働くシステムエンジニアが多いことから、インド人のシステムエンジニアの数は正確に把握できていないと考えられます。質・量ともに最高水準のIT人材が揃っている国であるということは間違いなく言えるでしょう。

──近年は、グーグルのサンダー・ピチャイ氏や、マイクロソフトのサティア・ナデラ氏、IBMのアルビンド・クリシュナ氏、スターバックスのアルビンド・クリシュナ氏、シャネルのリーナー・ナーイル氏など、IT企業のみならず、様々な業種の世界的企業においてインド出身のトップが増えてきていますね。

はい。これは、「インドのシステムエンジニアのスキルレベルが高い」という要因を超えて、インドの価値観や信念がグローバル社会に求められているのだと考えています。インドは、経済自由化以前は貧しい国でしたが、決して「不幸」ではなかったのです。家族とのつながり、地域社会とのつながりがあり、物質的な豊かさよりも精神的な豊かさを大切にしてきた背景があります。
 
今、インドのモディ首相が発信しているメッセージは「人間中心のグローバリゼーション」です。これは、ただ物質的な豊かさを追い求めて国同士が奪い合うのではなく、様々な価値観を持つ人が助け合い、人間的な豊かさとは何かを追求していこうというメッセージなのだと考えています。
 
マイクロソフトのサティア・ナデラ氏は、役員会議において、「KPIの進捗確認」を中止して、「社会にはどのような課題があり、それをどのように解決すべきかというストーリーテリング」を行うように変更したと言います。これによって、多くの人の力を1つにすることができました。コロナ禍においてはTeamsなどのマイクロソフト製品の急激な進化が社会に強く貢献していたと思いますし、結果として、マイクロソフトの大きな成長につながりました。
 
私も、ビジョナリーなリーダーの行動から学びながら、「ITのスキルを高め、会社同士で技術力を競い合う」という視点を超えて、いかに社会の問題を解決するのかという視点で行動していきたいと考えています。

インドの技術力と日本の品質基準を融合

──バビックさんは、大学卒業後すぐに日本で働くことを選んだ理由を教えてください。アメリカやヨーロッパではなく、なぜ日本なのでしょうか?

私が大学を卒業した当時は、多くのシステムエンジニアの進路はインド国内で外国企業の仕事を請け負うか、海外で働く場合はアメリカをはじめとした英語圏で働くことが一般的でした。
 
その中で、私が入社した会社では日本企業とのつながりがあり、オフショアではなく日本に赴任して働かないかというオファーをもらいました。入社して半年ほどしか経過していませんでしたが、日本は経済的に豊かであり、自動車をはじめとした工業がさかんで学べることが多いために、大きなチャンスであると考え、日本行きが決まりました。
 
日本での仕事は、顧客のオフィスでの常駐で、インド人は私1人で勤務していました。日本語や日本のマナーも分からないことだらけでしたが、顧客の社員の方々からのサポートは手厚く、やがて一定のパフォーマンスを出せるようになってきました。
 
この期間は、私にとっては非常に重要な経験になりました。オフショアで言われたことを言われた通りに実行するのではなく、顧客のオフィスで顧客の悩みを直接聞き、解決策を一緒に考えることができました。また、解決策を提供すれば、確実にお互いの信頼関係が深まることも実感できました。実務では、「高い技術力」よりも、顧客のニーズを正しく理解し、クイックにお応えすることのほうがより大切であるということも分かりました。
 
最初は私一人という環境でしたが、顧客との信頼関係が深まるにつれて、インドのシステムエンジニアを多く招くことができました。1人から3人、3人から5人、5人から10人と段階的にチームが拡大していき、最終的には30人を超えるチームで、顧客や様々な関係先と連携しながら、大きなソリューションを構築・運用するまでに至りました。
 
私が独立しようと考えたきっかけは、私が所属していた会社もそうだったのですが、システム会社として「優秀な人材を提供するだけ」で技術やプロジェクトマネジメントの確立したノウハウを提供できていない会社が多いということ。また、「顧客のために、どのような価値を提供するのか」ということを考えることなく、たんに技術力を提供しようとする会社が多いと考えたためです。
 
私は、もっとも信頼するチームメイトのラジェンドラとともに独立して、会社名を「VeBuIn」と名付けました。これは、”We Build Innovation for Better Society”という会社のミッションをまずは掲げ、そこから名付けたものです。私が1人のシステムエンジニアとして大切にしてきたことをミッションに掲げましたが、同じ思いを持つ人の輪をどんどん広げていきたいと考えています。
 
私は日本に来て15年近くなります。日本人が要求する品質や納期、コストの水準は非常に高いものがあり、これは日本のものづくりの歴史から生まれたものと感じています。私たちは、日本で認められる水準になれば、間違いなく世界で通用するIT企業になれると考えています。
 
また、日本には尊敬すべき企業が少なくありません。私たちの顧客であるJERA様は、”日本のエネルギーを新時代へ“というメッセージが社名の由来となっており、社員の方々がクリーンエネルギーによるサステイナブルな社会づくりに本気で取り組んでいます。BELC様は、”地域社会の人々により充実した生活を“というメッセージの元、全社員が商品・サービスの改善に取り組んでいます。私たちは、こうしたビジョナリーな会社で働く方々に刺激を受けながら、私たちも成長していきたいと考えています。私たちがさらにレベルアップし、お互いの強みを掛け合わせることで、より良い社会を実現できると考えています。

インドと日本、すべての人が”One Team”

──よく分かりました。VeBuInは日印両方にオフィスがあり、茨城県つくば市に本社、インド西部のアムダーヴァードに開発拠点がありますが、どのような役割をもっているのですか?

日本のオフィスは、顧客とコミュニケーションし、顧客のニーズをしっかりと把握し、プロジェクトの骨格をつくる役割を担います。システムエンジニアの中でも、主にマネージャーやリーダーといった役職者が働いています。特につくばを選んだ理由としては、国際都市であり、インドの人にとっても生活しやすい環境が整っていることです。インドレストラン、インドのスーパー、インターナショナルスクールが充実していて、整備された公園も多く、家族も含めて生活するのに最適な環境です。また、つくばエクスプレスで都内までのアクセスが良く、成田空港へも1時間以内で行ける環境が整っています。
 
開発拠点のあるアムダーヴァ―ド(グジャラート州)は、私の出身地です。グジャラート州は、ガンディーや現在のモディ首相の出身地でもあり、今後の成長が期待されています。JETROが支店を置くなど、日本からも注目されている地域です。日本ではインド工科大学のみが有名ですが、インドでは全国的にITの理論を学べる大学が無数に存在しています。アムダーヴァ―ドにも良い大学がたくさんあり、人材の宝庫です。
 
この2つの拠点は、「オンサイト」(考える)と「オフショア」(実行する)という役割分担ではなく、顧客ニーズを主に考えるチームと技術的なリードを主に考えるチームという形で、“One Team“でプロジェクトを実行することを目指しています。

──「日本」「インド」という民族性の垣根を超えた、VeBuInのメンバーとして活躍できる人材に共通するポイントは何でしょう。

何よりも、“We Build Innovation for Better Society”という同じ目的をもって取り組むことが大切です。「会社として、売上・利益を上げる、ノウハウを確立する」「個人として、お金を稼ぐ、スキルを磨く」というのはあくまでも結果や手段でしかありません。まずは、目指す先を同じくできる人でなければなりません。
 
私たちはミッション実現に向けて、“Empathy, Shared Value, Safety & Relieability, Lean & Agile, Glowth Mindset”という5つのバリューを大切にしています。これらについても、社内のメンバーにも伝える努力をしてきているのですが、いずれにせよ言いたいことは「スキルありき」ではないという点です。スキルは、後からいくらでもついてきます。

──日本のメンバーについては、どのような人を採用しようと考えていますか?

システムエンジニアについては、主にインドでの採用を実行しています。国籍を問うことはありませんが、ITを大学でしっかりと勉強してきた人、英語を活用できるということが大前提となります。
 
日本での採用は、Marketing&Sales(PR、営業、カスタマーサクセス、カスタマーサポートなど), Corporate Design(採用、教育、給与、社宅、経理、財務など)という2つの部署での採用が中心になります。この2つの部署では、これまで社内で蓄積されてきたノウハウがあり、また、様々な専門家と連携を図っているために、採用にあたって特別なスキル・経験・知識を求めていません。繰り返しになりますが、私たちのミッションやバリューに共感し、行動に移してくれる人こそ活躍できる会社であると考えています。
 
私たちは元々多様性のあるインド出身であり、もちろん国籍・宗教・性別・年齢・これまでの経験などで差別をすることは一切ありません。会社を良くしたい、顧客に貢献したい、社会をより良くしたいと考え、行動する人は自然に評価・登用される会社にしていきたいと考えています。

成長の可能性は無限大、株式上場もマイルストーン目標でしかない

──挑戦意欲のある人に、最適なカルチャーがあるのですね! 最後に、今後のVeBuInの成長戦略を聞かせて下さい。

IT企業の成長可能性は、そこにいる人材次第だと考えています。私たちは、今年で創業10年目となりますので、まずはこれまでの知識と経験をノウハウとして体系化していきます。そして、採用チャネルの確立し、人材を育成する環境を整えていきたいと考えています。
 
私たちは、幸運にも日本を代表するような企業から選ばれ、パートナーとして数年以上の取引を継続し、拡大することができています。顧客から無数のIT企業の選択肢から選ばれていることに感謝しながらも、選ばれるだけの力を持っていることに対して自信をもたなければなりません。成長戦略の第一は、会社のノウハウを確立させながらも、同じ気持ちで働く仲間をどれだけ増やせるかという人材採用・育成の観点です。
 
さらに、私たちは自社プロダクトの開発も行っています。これは、私たちが直接社会課題を定義し、解決を図る取り組みとなります。現在はワークフロー/経費精算システム”SmartFlow”を開発・販売していますが、まずはこの製品について、カテゴリ内でのNO1を目指しながら、新たなプロダクトも順次企画していきたいと考えています。
 
顧客に向けて開発する「ソリューション事業」と自ら実行する「プロダクト事業」の両輪によって、社会の問題に対する解像度を高めながら、解決するための技術力・プロジェクト実行力を養っていくことができます。
 
これによる可能性は無限です。
日本・インドの社会をより良くするための力となっていきたいと考えています。
 
会社設立当初は「上場を目指したい」という思いがありました。インドのシステムエンジニアが日本で起業し、株式上場まで果たすことができれば、「インドと日本の架け橋」として、より多くのインドのシステムエンジニアが日本に興味をもつサクセスストーリーになると考えたためです。
 
しかし、今では株式上場すらも、1つのマイルストーン目標でしかないと考えています。私たちの成長可能性は無限であり、チャレンジ・進化を続けていきたいと考えています。

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