IT導入って、何からすればいいんやろか?
今回ご相談いただいたのは、北九州で鉄鋼業を営む社長さん
見た目はガタイがよくて、ちょっと強面。
最初は正直「怖そう…」と思ってしまったんですが...(笑)
話し始めると豪快に笑う姿と方言まじりのトークが、だんだん心地よくなっていくすごく人間味のある方でした。
そんなクライアント社長が、打ち合わせの際にこう言いました。
ーー IT導入ってなんかせないかんのは、分かっとるんやけどよ。ぶっちゃけ、何から手ぇつけたらええんか分からんのよ...同じように感じている経営者の方、実は多いのではないでしょうか?
相談内容 ◤ " 流行ってるらしいから入れてみた" の落とし穴 ◢
クライアント社長は、少し気まずそうにこんな話もしてくれました。
ーー 前にな、“このツール今はやってますよ!”って営業に言われてな。周りも入れとる言うけん、うちも流れに乗っといた方がええんかなと思って入れてみたんよ
最近は、クラウド型の業務システムとか、SaaS※のサービスとか、「これさえ入れればDX!」みたいに見えるツールが本当にたくさんあります。
※SaaS(サース):インターネット(Web)上のサービスにログインして使うタイプのシステムのこと
例外なく、クライアント社長も「世の中の流れに遅れたらいかん!」と思われシステム会社の営業より勧められたツールを導入してみたそうです。
でも、その結果はというとーー
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・現場からは「また新しいの増えたんか…」とため息
・使い方が分からず、結局、一部の人しか触らない
・既存のやり方(紙・エクセル・口頭)も並行して行っている
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という状態でした。
クライアント社長は、少し申し訳なさそうにこう本音をこぼしました。
ーー せっかくお金も時間もかけて入れたんやけどなぁ...このまま“ 誰もちゃんと使わんシステム ”にしとくのが、一番イヤなんよ。なんとか“ 社員がふつうに使える状態 ”まで持っていきたいんよね。
この言葉を聞いて、社長(以下 本田)がこう言いました。
ーー クライアント社長!システムそのものがダメというより「システムの入れ方」と「考える順番」 が最初からズレていたのかもしれないです
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ITベンダー(システム会社)に丸投げは危険
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「社員がふつうに使える状態」にするための順番に戻す
じゃあ、どうすればよかったのか?
そう問われた本田は、クライアント社長に“ 順番 ”を変えるという話をしました。
クライアント社長が言う 「社員がふつうに使える状態」 に近づけるために、いま目の前のシステムの細かい仕様の話はいったん横に置き、
ーー このシステムを“みんながふつうに使えるようにする”ために、いったん立ち止まって「導入の進め方」から一緒に整理し直しませんか?
と本田は提案しました。
そこで本田がクライアント先で実際にやったことは、大きくこの3つでした。
そこで本田が実際に行った3つの内容をご紹介します
①現場の人に「一番しんどい作業」を聞く
本田はまず会議室ではなく現場に向かいました。業務担当やベテラン社員さんに一人ずつ声をかけて、
ーー 今の仕事で、いちばんしんどいところってどこですか?
ーー 正直、“ここ改善してほしい”って思ってる作業はどこです?と、雑談に近い温度感でヒアリング。出てきた声をその場でノートにメモしながら、
「現場のしんどさの正体」 を集めていきました。
そこで出てきたのは、
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・同じ数字を紙とシステムに二重入力している
・月末だけ残業がドッと増える
・「誰かに聞かないと分からない作業」があちこちにある
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といった、“現場あるある”な悩みでした。
② 自社の仕事の流れを、ざっくり紙に書き出す
集めた現場の声をもとに、本田はホワイトボードと紙を使って今の業務フローをその場で書き起こしました。
● 誰が → どの順番で →どんな紙やエクセルを使っているのかこれを矢印でつなぎながら整理。
「ここだけ二重入力になっている」「ここで紙に一回戻っている」といった、
ムダや詰まりポイントが、みんなの目にもハッキリ見えるようになってきました。
これにはクライアント社長も
ーー こうやって見ると、うち、同じこと何回もやっとるな……と苦笑いしていたそうです。
③ 「まずどこから良くするか」をひとつ決める
全部を一気に変えようとせず、本田は会議の中でこう提案しました。
ーー この中で、“まずここを良くしたら一番インパクトが大きい” って思うのはどこですか?社長・ベテラン社員・現場のキーマンの3人で話し合い
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・まずはこの1〜2か所を良くする
・残りは、その結果を見てから少しずつ手をつける
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という
“一歩目のターゲット” を決めました。
そのうえで本田は、
ーー じゃあ、その部分を楽にするために今のシステムをどう直すか・運用をどう変えるかを一緒に考えましょうという流れで、ようやく
具体的なシステムの見直しに入っていきました。
この順番を踏んだことで、
"なんとなくIT化"ではなく“この仕事を楽にするためのシステム改善”をしよう。
と、みんなの中で目的がそろっていったそうです。
ツールは目的じゃなくて、“現場を助ける手段”
打ち合わせから戻ってきた本田が、社内でこう言っていたのを覚えています。
ーー ツールは目的じゃなくて、あくまで“手段”なんよ
そして、さらっと続けていました。
ーー “このツールを入れること”がゴールになった瞬間に、だいたい失敗する。そうじゃなくて、『どの仕事を楽にしたいか』『どんな状態になりたいか』を決めてから、それを叶えるためにツールを選ぶ。これが何よりも重要なんよ。
それを言われて、「本田が見ているのは、いつも “ ツール ” じゃなくて“ 現場の未来 ”なんだな」と感じました。
こういう時に本田ってすごいな....って心から思います。(ディスってないですよ!多分...笑)
▼「うちでもできるかも」と思った方へ
ここまで読んで、「正直、うちも“なんとなくIT導入”になってるかも……」
と思った方に、トーコ目線で【
明日からでもできそうな一歩】を少しだけまとめておきます_φ(・_・
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①いきなりIT担当やベンダーと話す前に、現場の人に「どこが一番しんどいか」を聞いておく
②きれいな図じゃなくていいので、自社の仕事の流れを手書きで書き出してみる
③その中から、「まずここから変えよう」と1箇所だけ決めてみる
▼△▼△▼△▼△▼
ここまで出来たら、もう立派な IT導入の
スタートラインに立っています!
❁相談したい方はお気軽に
LINEからどうぞ❁
❁今日のまとめ❁
クライアント社長とのお話を通して、私がノートにメモしたのはこんな言葉でした。
/
IT導入のスタートは「ツール探し」じゃなく「現場の課題探し」\
『
最新テクノロジー=正解 』ではないということです。
もし、「
IT導入って、何かはしないといけない気がする。でも、何をしたらいいか分からない」と感じている方がいても、
それは“
遅れている ”というより、
みんなが立っているふつうのスタートラインなんだと思います。
そしてそこから一歩踏み出すなら
ーーうちの現場で、一番しんどいところってどこだろう?と考えてみること。そして、それをちゃんと
言葉にしてみること。これが導入の1歩目なんです。
IT導入は“システムを入れること”じゃなく、“現場を助ける一歩目”が重要だと今回のクライアント社長ををみて感じました。
コラムを書き始めて、気づけばもう2か月。「もっと多くの方に届けたいなぁ」と日々思っています。
社会のなかの“ITリテラシーの差”が少しでも小さくなって、どの会社も、どの現場の人も、当たり前にシステムを味方にできるようになったら――
きっと1社1社が、今よりもっと“心も会社も”豊かになれると私は本気で思っています。
そんな未来を、みなさんと一緒に少しずつ作っていけたらうれしいです。
このコラムが、そのための小さなヒントになっていたら…トーコはすごくすごくうれしいです。
/// コラムを毎週見てくださりありがとうございます。来年もどうぞよろしくお願いします! ///