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【TOPインタビュー】イシンの今と未来

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PROFILE

代表取締役社長
片岡 聡

「人々が育っていく豊かな土壌でありたい」――。こう語るのは、イシンを率いる代表取締役社長の片岡聡。この言葉が物語るように、近年のイシンからは、国内外で次々と新しい事業が生み出され、それが人と企業の成長をもたらす原動力となっている。「事業家創発」を社是に掲げ、会社や事業のカタチを変えながら、進化を止めないイシン。その強さのヒミツや、今後のビジョンなどを片岡氏に聞いた。

イシンの事業展開

まずは、イシンの全体像を知りたいと思います。事業内容を教えてください。

われわれは社会の進化に貢献するという考えのもと、メディアをひとつの軸に展開しながらも固定的なビジネスモデルにこだわっていません。よりよい社会の実現に向けて、その社会課題の解決に注力するという考え方です。

創業来、主に日本におけるベンチャーエコシステムの発展に貢献したいという思いでベンチャー通信や起業家カンファレンスなどを展開してきましたが、今ではシリコンバレーや東南アジア、インド、イスラエルなど世界全体のベンチャーエコシステムに関わることで、「世界の新産業振興」というテーマにチャレンジしています。そして、各エリアによってメディア展開をベースにしながらもビジネスモデルは違います。

また、2014年に立ち上げた公民連携事業は、自治体通信というメディアを通して自治体の効率的な行政運営に貢献することで、活力ある地域の実現を目指す「民間企業のナレッジを活かした地方創生」というテーマで展開しています。

そのほかにも多くの事業展開をしていますが、新事業も含めて「生産性向上」「グローバル化」「雇用創出」など、いま求められている社会テーマを軸に、われわれの強みを活かしながらブランディングやマーケティング、イベントを通じた機会創出、そしてまた独自ファンドを通じたビジネス発展の機会創出など多岐にわたって展開しています。通底するのは「社会を前に進めていくコミュニケーションの創出」です。

コミュニケーションという点でいくと、イシンは従来、メディアやコンテンツの制作を通じて、クライアントの「伝えたいこと」を、読者の「知りたいこと」にうまく変換して、メディアの価値を高めながら、両者のコミュニケーションを促進させる手法を長く開発してきました。当社ではこのメソッドを「Communication Re-Engineering」と呼んでいるのですが、これこそイシンの競争力の源泉であり、設立以来、多くのお客さまに支持されてきた理由だと認識しています。このメソッドを活用し、あらゆる分野でメディアを立ち上げ、有益なコンテンツを提供しています。

めざすのは、「人で勝つ組織」

なぜ、イシンでは次々と新事業が立ち上がるのですか。

イシンには、これまでも事業創出を通じて、事業家、経営人材を生み出すことを重要な経営目標に掲げてきた歴史があるからです。

「事業家創発」という社是、「世界的な視野を持った事業家たちが、差別化された事業を通じて社会の進化に貢献する」という経営理念があります。イシンにとって事業の目的とは、単に利益を上げることだけではなく、事業発展に伴う組織運営や人材育成を通じて、事業家を生み出すことでもあるのです。この理想は、イシンの経営において、これからも決して変わることのない柱です。

いくつもの事業を同時に展開していくのは、「経営効率が悪い」という見方もあるのではないでしょうか。

確かに、経営学のメインストリームからは外れているかもしれません。イシンほどの企業規模で、10個ほども事業を展開している例などとても少ないでしょうね。多くのスタートアップ企業は、1つの事業に経営リソースを集中投下し、大きな成長を実現していく経営スタイルが多いです。社名がすなわち、サービス名となっているような。いわば「一点突破型」ですね。資本効率の上でも、本来はそれが望ましいのかもしれない。

しかし、われわれがめざすのは、一言でいえば、「人で勝つ企業」です。持続的に成長している企業に共通するのは「人財への高い期待」であり、それを徹底することで「再現性のある強い組織の構築力」が生まれていくのだと思っています。

もうひとつ重要なことは、社会が進化するにあたって必要とされるテーマは変化していくということです。ですから、どれだけイシンが成長し、規模が大きくなっても、新しい事業づくり、人づくりに力を入れる組織風土を変えることはありません。それは、イシンの経営としての明確な意思です。

大切にしたい「計画的偶発性」という考え方

事業や人を育てる組織風土をつくるうえで、大切にしていることはありますか。

人やモノ、出来事などとの「出会い」を大切にすることだと思います。私はよく、「計画的偶発性」という言葉を使うのですが、事業や人が育っていく過程では、緻密な計画性が必要ではありますが、それだけではダメで、そこには偶然からもたらされる多くの「出会い」もさまざまに作用していくものです。

実際に、イシンで生み出された新事業の数々を振り返れば、例えば海外事業はシンガポールやアメリカを舞台に、何もない状態からイシンの人財が立ち上げた事業がもとになって拡大したもの。そのほかの事業も、それぞれのメンバーが事業家の意識のもと、社会課題の解決のために立ち上げた経緯があります。様々な方との出会いをはじめ、社会やマーケットの動きが生み出す事業機会、さらには運に恵まれたこともありました。

もちろん、経営者として、持続的な成長を追求する計画性は大事にしていますが、その一方で人やモノ、コトとの有機的なつながりをもって、創発的に事業や事業家が生み出される組織風土を守っていく考えです。あらゆる事象を「機会化」できるか、が大事だと思っています。

これからのイシンのビジョンを聞かせてください。

2005年に設立して以来、「人財」をはじめとするあらゆる経営リソースが充実してくるなかで、われわれが社会の進化に貢献できる手段がどんどん増えているのを感じます。ですから、今後もイシンの競争力を発揮しながら、社会の進化に貢献できる事業ドメインを探し続け、新事業の展開を模索し続けます。同時に、イシンのメンバーには、この環境を活かして、世の中が抱えている社会課題の解決を図れる事業家に育ってほしいと願っています。

そのために、メンバーにとってイシンとは、快適ではあるが惰性的で学びの少ない「コンフォートゾーン」ではなく、能力の限界を超えた「パニックゾーン」でもなく、大変な刺激がありながらも走り抜けた後に大きな成長を感じられる「ラーニングゾーン」を提供していかなければならない。イシンは、人々が育っていく豊かな土壌でありたいと思っています。

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